九州で梅干しの産地といえば大分の大山です。
「進撃の巨人」でも有名になりましたね。
大山の直売所・物産館には「本物」の無添加梅干しが所狭しと並んでいます。クエン酸たっぷりの昔ながらの梅干しです。
クエン酸といえば、日々の掃除から心身の健康にいたるまで、その効果・効能が注目を集めています。
梅干しは、クエン酸豊富な保存食として備蓄リストから外せない食品です。
今回は無添加梅干しの主役クエン酸に注目して、梅干し本来の良さをお伝えできればと思います。
大山の無添加梅干しもご紹介しますので、「日本梅干し党」の方、ぜひ一度ご賞味ください。
梅干しは無添加が本来の姿
梅干しは、塩漬けにしてお日様に干すだけで立派な保存食になります。
大山の梅蔵物産館には年代物の梅壺が並んでいますが、展示されているもっとも古い梅干しは、400年以上前のツワモノです。
塩分濃度が高ければ高いほど保存のきく梅干し。
行きすぎた減塩や調味料の添加は、梅干しを短命にし、栄養分も失わせてしまいます。
梅干しの添加物とは?
無添加が当たり前の梅干しに、どうして添加物を加えるのでしょうか。
それは、消費者の減塩志向に合わせて、塩抜きをしたり甘めの味付けをしたりするためです。
天然塩を使った梅干しではなく、精製塩を使って大量生産されるような梅干しなら、確かに塩の摂りすぎが気になるでしょう。
塩抜きをした梅干しは日持ちがしないので、保存料を加えることになります。
さらに、味を調え口当たりをよくするための化学調味料や甘味料。梅干し特有のすっぱさを酸味料で代替することもあります。
無添加の梅干しにはクエン酸がたっぷり
調味液に漬けられた梅干しは、梅干し特有の塩辛さ・しょっぱさが苦手な人には食べやすくなるでしょう。
しかし、塩抜きの過程でクエン酸も減ってしまいます。梅干しのしょっぱさの正体のひとつがクエン酸です。
梅干しにはどれくらいクエン酸が含まれているのでしょうか。
梅干しの主な栄養成分を見てみましょう。可食部100gあたりの数値です。
「梅干し(塩漬け)」一般成分表より抜粋
成分名 | 値 | 単位 |
廃棄率 | 25 | % |
エネルギー | 29 | kcal |
水分 | 72.2 | g |
たんぱく質 | 0.9 | g |
脂質 | 0.7 | g |
食物繊維 | 3.3 | g |
炭水化物 | 8.6 | g |
有機酸 | 4.3 | g |
灰分 | 17.6 | g |
ナトリウム | 7200 | mg |
カリウム | 220 | mg |
カルシウム | 33 | mg |
マグネシウム | 17 | mg |
リン | 21 | mg |
鉄 | 1.1 | mg |
亜鉛 | 0.1 | mg |
銅 | 0.07 | mg |
マンガン | 0.11 | mg |
ヨウ素 | 1 | μg |
クロム | 37 | μg |
モリブデン | 2 | μg |
ビタミンA(レチノール活性当量) | 1 | μg |
ビタミンE(α-トコフェロール量) | 0.2 | mg |
ビタミンK | 9 | μg |
ビタミンB1 | 0.02 | mg |
ビタミンB2 | 0.1 | mg |
ナイアシン | 0.4 | mg |
ナイアシン当量 | (0.4) | mg |
ビタミンB6 | 0.04 | mg |
パントテン酸 | 0.03 | mg |
ビオチン | 0.8 | μg |
梅干しの可食部100g当たりに有機酸が4.3gも含まれています。
食物繊維が3.3g、炭水化物が8.6gであることを考えると、かなりの量ですね。
梅干しのこの有機酸はほとんどクエン酸なのです。
梅干しと同じように健康に良いといわれるお酢にもクエン酸や酢酸が含まれています。
【関連記事:毎日のお酢習慣は効果的?体は固いままだけど・・・】
梅干しに含まれるクエン酸とは?
無添加の梅干しにたっぷり含まれている有機酸とは、酸性の有機化合物(炭素を含む化合物)のことです。
クエン酸はその一種。食品では、梅干しやレモンなどの柑橘類(かんきつるい)に多く含まれています。
酸ですので、アルカリ性の汚れを落とすのに使われたり、食品添加物として酸味の調整をしたり、日常生活になじみが深いですね。
クエン酸は人工的に合成することもできますし、人間の体内でも生成されます。
クエン酸回路
クエン酸は、私たちの体内でも重要な働きをしています。
その場所はミトコンドリア。生物の授業がなつかしいですね。
ミトコンドリアは、生命に必要なエネルギーを作っている場所です。1つの細胞に100個から2000個程度含まれています。
ミトコンドリアは、食事で得られた栄養素と、呼吸をして取り込んだ酸素の2つを使って、エネルギーの供給源を作ります。いわば「生命エネルギーの発電所」です。
ミトコンドリアの複雑な発電の過程に「クエン酸回路」というシステムが組み込まれています。
このシステム回路の最初に生成されるのがクエン酸です。「クエン酸回路」という名前の由来にもなっています。
クエン酸は機能性表示食品
クエン酸は私たちの体になくてはならない物質です。
では、梅干しをはじめとする食品に含まれるクエン酸が、具体的にどのような健康効果をもたらすのか、全体像はわかっていません。
もっともよく知られている疲労回復効果についても、意見が分かれています。
効果があると経験的にわかっていながら、現代のデータ社会では根拠が求められます。そこで、登場するのが「機能性表示食品」という名称です。
機能性表示食品制度とは、国の定めるルールに基づき、事業者が食品の安全性と機能性に関する科学的根拠などを届け出れば、機能性を表示できるという制度です。
クエン酸については、たとえば次のような機能により届出が行われています。
・疲労感を軽減
・体脂肪を減らす
・ストレス・緊張の緩和
・血圧のサポート
・体温(末梢体温)を維持する
・睡眠の質の向上
(プラスエイド「機能性食品データベース」より)
[参考:「エネルギー代謝とミトコンドリア機能」]
[参考:「梅の有機酸に関する研究]
「梅栗うえてハワイへ行こう」
昭和36年(1961年)、大山村(現在は日田市大山町)では、「梅栗うえてハワイへ行こう」というキャッチフレーズを掲げて、大きな農業改革に乗り出しました。
日本中が貧しい時代でしたが、山間の寒村だった大山の農業収入は大分県でも最下位でした。
当時の村長・農協組合長、矢幡治美氏が先頭に立って、米作りから果樹栽培へ大転換を図ります。
幾度も海外を視察し、先見の明のあった矢幡氏の読みはことごとく的中し、貧しかった村は梅をはじめとする果樹栽培で大成功をおさめたのでした。
かつての牛小屋を使って各農家でエノキダケの栽培も始まり、梅・栗の季節以外にも年間を通して利益が上がるようになります。
マスコミにも大きく取り上げられ、今度は逆に海外からも視察に訪れる国内有数の自治体となりました。
小さな村に年収1千万〜2千万の農家が増えたと、以前、特集番組の中で聞いて驚いた記憶があります。
農家の方々のパスポート所持率はたいへん高く、海外研修や海外旅行経験者が多いそうです。
「梅栗うえてハワイへ行こう」キャンペーンは現実のものとなり、大成功を収めました。
農林水産省の都道府県別データによると、10a当たりの梅の収量(令和4年度)は、大分県が全国4位です。
2023年現在、小さな大山町の中に大きな施設が3か所もあります。農協直営の「木の花ガルテン」・道の駅「水辺の郷おおやま」・JRグループの「うめひびき」です。
すべての施設で梅干しや梅製品をはじめとする地元の農産物・特産品の販売があります。
私が日ごろ購入している梅干しとエノキダケは、ほとんど大山産です。
[参考:「一村一品運動の原点―大山町の米作から果樹栽培、きのこの栽培への転換の軌跡」]
大山の無添加梅干し
大山の無添加梅干しが冷蔵庫に入っています。2年前に「木の花ガルテン」で購入した梅干しです。
大山の梅干しは農薬をほとんど使っていません。土が健康だからです。大山では、エノキダケを栽培するときに使うオガクズを堆肥化して有機肥料にしています。
養土源と名づけられた有機肥料のおかげで、消毒が欠かせないといわれた梅でさえ、他の産地の方が驚くほど少量で危険性のない農薬使用なのだそうです。
森梅園・農園の無添加梅干し
森梅園・農園の梅干しは、現在、自宅の冷蔵庫に入っているお気に入りの無添加梅干しです。
大事に大事にとっておいた令和3年の「新物」!南高梅で「うめたろう」といいます。
やぶれ梅ということでお徳用です。やぶれていようがなかろうが、熟した本物の梅干しの味!むしろやぶれた梅が好き。
ちなみに「うめじろう」もいます。弟分の方は七折小梅(ななおれこうめ)です。
森梅園・農園さんがいかに清く正しく美しい無添加梅干し農家さんであるかは、うめたろう・うめじろうのパッケージの中に入っている紹介文からお察しください。
森梅園・農園さんの梅干しはHPからオンライン購入できます。
「うめたろう」「うめじろう」はやぶれ梅の哀しさで店頭販売のみだと思われます。ああ、うめたろう、うめじろう。
やぶれていない「うめたろう」「うめじろう」の仲間たちは、スタイリッシュにパッキングされていて贈答用としても最適な商品になっています。
森梅園・農園さんのHPからお買い求めください。
矢野農園の無添加梅干し「豊の香梅」
現在、大山の無添加梅干しとして知名度が高いのは、矢野農園さんの「豊の香梅」ではないでしょうか。
味も評価も折り紙付きの大山産無添加梅干しです。「豊の香梅」は、矢野農園さんのブランド梅干しとして大手ECサイトで販売されています。
木の花ガルテン産直倶楽部
そのほかの大山の梅干しは、農協直営の「木の花ガルテン産直倶楽部」からもお取り寄せできます。梅干し以外の地元特産品も販売されていますので、どうぞご覧になってください。
進撃の梅干し
無添加の梅干しには、すっぱさの源であるクエン酸がたっぷり含まれています。
クエン酸はさまざまな効果効能が期待される有機酸の一つで、掃除から食用にいたるまで幅広い用途で使われています。
私たちの体内のエネルギー供給にかかわる重要な物質でもあります。
クエン酸たっぷりの無添加梅干しを食べて、日本の伝統的な食生活に息づいていた活力を取り戻したいものです。
日田市大山町は九州随一の梅干しの産地。町をあげて美味しい梅干しつくりに取り組んでいます。
梅干しといえば漬物ですが、梅干し同様、古くから食卓で日本人の健康を支えてきた山川漬についても別記事でご紹介しています。
【関連記事:三拍子揃った漬物!塩と大根だけで作る「山川漬」は400年伝統のかめつぼ製法から生まれる】
世相は決して明るいものではありませんが、顔をあげて前を向いて、梅干しをお供に私たちも快進撃を始めましょう。