うきは「小麦」活性化プロジェクトが始動しています。
うきは小麦とは、福岡県筑紫平野うきは市周辺(旧浮羽町、旧吉井町、旧田主丸町)で生産される純国産の小麦です。
お隣りの筑前麦プロジェクトに続く、筑後平野の「麦おこし」。
外国産小麦の混じらない純国内産小麦、しかも産地指定の小麦粉が新しく世に出ました。
日本人が待ち望みながら実現できなかった、国産100%小麦粉が当たり前の時代が来るかもしれません。
現在進行形のうきは「小麦」活性化プロジェクトについて詳しくお伝えします。
商品化されているうきは小麦もご紹介しますので、どうぞお役立てください。
うきはの歴史と資源
うきはの穀倉地帯には、秋が二度訪れます。
稲穂が実る文字通りの秋、そして麦の穂が黄金色に輝く麦の秋です。
麦秋は夏の季語。五月晴れの空に映える金の麦が、うきはに夏の到来を教えてくれます。
6月半ば、大麦・小麦の刈り入れが終わった畑が青々とした水田に生まれ変わっていくさまは、一幅の絵のようです。
うきはの五庄屋
筑紫平野は日本最大の稲と麦の二毛作(同じ田畑で一年に2種類の異なる作物を栽培する)地帯として知られています。
都道府県別小麦生産量では、北海道に次ぐ第2位を占める福岡県。その一大産地がうきはです。
うきはが、現在のような肥沃な穀倉地帯になったのは、江戸時代初期のことです。
それまでうきはは、筑後川を抱えながらも飢饉に苦しむ土地でした。
うきはの平野部は高台にあるため、集落に沿って流れる筑後川の水を引きこむことができなかったのです。
また暴れ川だった筑後川は大雨のたびに氾濫し、家や畑を押し流しました。
しかし、いつの時代にも偉人は現れるもの、うきはの庄屋5人が立ち上がります。
凶作に苦しみ続ける農民の暮らしを変えようと、筑後川にせきを設け左岸一帯に水路を開く構想を練りました。
ようやく久留米藩の認可が下り、工事が始まったのが1664年のことです。
工事現場には、もし失敗したら、庄屋に責任を取らせるために5本の磔(はりつけ)台が立てられました。
五庄屋を死なせてなるものかと、毎日地元の農民500人が懸命の作業に当たり、幾多の苦難を乗り越えて水路を完成させました。
私財を投じ、命をなげうって水路を開いた「五庄屋」の物語は、筑後の人々に昨日のことのように語り継がれています。
当時、庄屋の年齢は18歳から 50歳代で、平均年齢30歳代の若さだったそうです。
うきはテロワール
うきはは、名だたる製麺所が軒を連ねる九州三大めん処の一つです。
小麦と筑後川の水・豊富な地下水が、うきはを九州三大めん処の一つに育て上げたといえるでしょう。
さらに近年、うきは独特の恵まれた農業環境が注目を集めるようになりました。
うきはテロワールです。
うきはテロワールのサイトから引用させていただきます。
「テロワールとは、生育地の地理、地勢、気候の特徴をさすフランスで生まれた言葉です。環 境によって個性が変わりやすいぶどうが原料となるワインの特徴としてよく使われています。うきは市はフランスのワイン産地ボルドーやアルザスとよく似た日本でも非常にめず らしい地質・地形を有していることもあり、うきは市の農業をとりまく環境をうきはテロ ワールと名付けました。」
(https://ukiha-terroir.jp/より)
うきはの今
うきはの道の駅や直売所は、週末になると、農産物・フルーツ・加工品などを買い求める人が次々に訪れ、客足が絶えません。
また、地元うきはの名水と食材を生かしたカフェやパン・スイーツのお店も人気を博しています。
うきは「小麦」活性化プロジェクトは、このようなうきはの歴史・環境資源を背景に生まれました。
【関連記事:九州三大麺どころ「うきは」製麺所製造うきはブランドインスタントラーメン】
うきは「小麦」活性化プロジェクトとは
うきは「小麦」活性化プロジェクトは2021年9月に始動しました。
プロジェクトのサイトに、次のような言葉があります。
五庄屋と老人・女性・子供総出の大事業があったからこそ、
「この地に豊かな『水』と『大地』と『心』があることを、次の世代に伝えていきたいと考えています。」
先人たちが命を賭して築いたうきはの豊穣の恵みを、その心と共に次世代に伝えたいというプロジェクトの理念です。
うきは小麦を若い世代へ
うきは「小麦」活性化プロジェクトの一つ目の柱は、若い世代への継承です。
地元の浮羽究真館高校の協力を得て、高校生の体験事業を行っています。
小麦の播種(種まき)・麦踏み・収穫の作業、そして「うきはの小麦」と「うきはの食材」をテーマとした調理実習など、企画は多彩です。
地元の高校に通う生徒さんたちが、五庄屋に始まるうきはの恵みを思い起こし、近い将来、うきはの小麦を受け継いでいく生産者となり消費者となることでしょう。
うきは小麦を全国へ
うきは「小麦」活性化プロジェクトのもう一つの柱は、うきは小麦の商品化です。
うきは小麦をブランドとして全国的に販売し、地域の活性化につなげていきます。
うきは小麦オリジナル商品の開発販売・アンテナショップの開設を企画推進中です。
うきは小麦の特徴
小麦をはじめ、うきはの農産物は、先人の偉業とうきはテロワールの賜物です。
小麦はもともと北の作物ですが、うきはの肥沃な土地と大きな寒暖差が、良質な小麦を生み出しています。
希少な産地特定の純国内産100%
うきは小麦粉は、うきはでとれた小麦だけで作られています。
国産小麦粉は都道府県表示されたものが多いですよね。
たとえば北海道産や九州産という表示の場合を考えてみましょう。
100%国産小麦であっても、北海道内・九州内の複数の地域から集めた小麦を使っています。
現在の国産小麦を巡る状況では、やむを得ないことです。
小麦は農産物ですので、産地により年ごとに品質のばらつきが生じます。
製粉会社では、異なる産地や年度のものを混合することによって成分を調整し、小麦粉の品質を保っているのです。
ましてや、生産量の少ない国産小麦。単一産地では在庫が確保できる保証がありません。
うきはの小麦だけで小麦粉を作って商品化するというのは大変なことなのですね。
石臼で製粉
小麦の製粉には製粉技術が必要です。
うきはのある筑後地方には、昔から高い製粉技術をもつ製粉会社がありました。
うきは「小麦」活性化プロジェクトの協力メンバーに名を連ねている「鳥越製粉 」「田中製粉」も、名実ともに優れた製粉会社です。
うきは小麦活性化プロジェクトでは、うきは小麦を製粉する際、石臼(石うす)を使っています。
小麦粉の製粉は、金属製のロール挽きが普通です。
ロール挽きは大量生産できますが、80度を超える機械の熱が小麦の香りを消してしまいます。
石臼挽きは、石が熱をもたない上に低速で挽くため、40〜50℃ほどの低温で製粉することができます。
小麦粒があまり破壊されず、香りと風味が残る製法です。
確かに石臼挽き小麦粉は風味があります。
大陽製粉さんの石臼挽き小麦粉で、よくお好み焼きを作りますが、きめが細かいうえに生地だけでも美味しいですよ。
ミネラル・食物繊維
うきは「小麦」活性化プロジェクトのうきは小麦は、小麦のふすまも一部あわせて挽いているそうです。
ふすまとは、小麦の外皮(ブラン)や胚芽。米でいえば米ぬかに当たる部分ですね。
ふつう、小麦粉は、ふすまの部分を取り除いて精製しますので、いわば白米。
これに対してふすまを混ぜた小麦粉は、玄米のように栄養が残るということになります。
うきは小麦にふすまを合わせ、豊富な食物繊維とミネラルを残したのは素晴らしいですね。
うきは小麦粉の商品
うきは小麦はすでに商品化されています。
小麦県福岡はうどん県であり、ラーメン県であり、パン・ケーキ県です。
そのなかでも地元産の小麦粉を使ったベーカリーが増えています。
国産小麦と地元産の小麦が並んでいたら、地元産を選ぶのは人情ですね。
ただし、小麦粉自体が希少なため、まだまだ数は多くありません。
潜在的な需要はあっても供給が少ないのが現状です。
うきは小麦は、そんな状況に一石を投じてくれました。
うきは産100%の小麦粉が、令和4年度新麦から、産地限定商品として販売開始されています。
うきは産100%純国内産小麦粉
うきは小麦は、用途に合わせて3種類の品種がそろっています。
家庭向け800gの価格は880円(税込)です。業務用10㎏も用意されています。
〇中力粉… チクゴイズミ(うどん・だご汁など)
〇強力粉… ミナミノカオリ(パン・ピザなど)
〇薄力粉… シロガネコムギ(ケーキ・お菓子など)
製造所は八女市の田中製粉さん、販売者は吉井町の栗木商店さんです。
うきはのJAにじの直売所で直接購入することができます。
うきは小麦のかれいぱん・みのう生パスタ
今後、うきは小麦を使った商品はどんどん増えていくことでしょう。
2023年6月現在、うきは小麦を使ったパンが先行販売されています。
うきはのカフェレストラン「ラ・セーヌ」さんの「うきは小麦のかれいぱん」です。
お店のHPには、うきは小麦100%のお好み焼きも紹介されています。
また、うきはを囲む耳納連山から名をとった「みのう生パスタ」も商品化されました。
うきは産小麦!00%(ミナミノカオリ)で作った生パスタです。ペペロンチーノ味・トマトクリーム味があります。
期待されるうきは小麦商品
うきは「小麦」活性化プロジェクトの商品企画開発部門に、うきはの老舗・名店が名を連ねています。
〇麺部門…栗木商店
〇洋菓子部門…パティスリージョルジュマルソー ・パティスリーナチュール
〇パン部門…ぱんのもっか ・かがし屋
〇ピザ・お好み焼き部門…ラ・セーヌ
うきはに行けば、うきは小麦を使った美味しいランチやスイーツが食べられるとなれば、週末のうきはは益々にぎわいをみせることでしょう。
うきはオリジナルアンテナショップ
うきは小麦を発信するアンテナショップの開設が計画されています。
開設予定地はすでに決まっており、以下のとおりです。
〇住所(予定地) うきは市吉井町富永
〇営業時間 9:00~18:00
〇駐車場 大型5台・普通車50台
うきは「小麦」活性化プロジェクトのサイトでアナウンスされている企画は二つあります。
ひとつは、各種体験ブースです。
うきは小麦を使った麺打ち・うきは小麦やフルーツを使ったパンとスイーツのブースが準備されています。
もうひとつは、日替わりキッチンカーです。
日替わりで、2〜3台のキッチンカーの来訪が予定されています。
オープンがとても楽しみです。
筑前・うきはから広がる国産小麦
筑前に続き、うきはでも始まった、麦で地域の活性化を図る「うきは『小麦』活性化プロジェクト」は、さまざまな夢の詰まった試みです。
うきはの農業のいしずえを築いた五庄屋の意思を受け継ぎ、うきはの恵みを若い世代へ渡していこうとしています。
それがうきはの小麦を守り、人々の暮らしを守ることにつながっていくでしょう。
うきは「小麦」活性化プロジェクトが進行すれば、産地特定の国産小麦を日本各地で作る機運も高まるかもしれません。
プロジェクトに携わる現代の五庄屋ともいえる方々を、心から応援したいと思います。
ECショップが開設され、販売が本格化しましたら、情報を更新してまいります。