味噌(miso)を見直す時代がやってきています。
腸内環境をととのえる発酵食品の免疫力向上効果は、海外でも注目の的。輸出量も大きく増えています。
味噌は、醤油・酢と並んで日本の気候風土が生んだ、たいへん優れた発酵調味料です。食生活を支える、備蓄の基本的な調味料でもあります。
毎日味噌汁を飲む習慣のある人はもちろん、たまにしか飲まない人、ほとんど飲む機会がない人も含めて、味噌の効能はなんとなくわかっていますよね。
古くから日本人の生活に根ざしてきた味噌文化。その効能は誰しも身をもって知っているだけに、科学的な裏付けが進んでいませんでした。
近年、味噌の効能に関して、専門家の知見や科学的なデータが集まりはじめています。そこで、食品としての味噌の特性・健康維持機能に焦点を当てました。
なんとなくわかっていた味噌の効果に、実は科学的な裏付けがあることを具体的にお伝えしますね。味噌が、備蓄に必須の万能調味料であることを、より実感いただければ幸いです。
万能調味料としての味噌の特性
味噌はそのままでも十分美味しい食品です。また、味噌汁以外にもさまざまな具材とあわせて料理の味をぐんと向上させる万能調味料でもあります。
麹菌のはたらきで生まれる独特の旨味や酸味。そして日本人の郷愁をよびさます味噌汁の香りは味噌の一番の特性ではないでしょうか。
風味・香りのほかに、味噌の調理上の特性には次のようなものがあります。
・一緒に調理する食材の味を変える
・味噌に含まれる塩分が食材の水分を抜き旨味を閉じ込める
・魚肉の生臭さを消す
・ずば抜けて強い抗酸化力をもつ
とくに最後の「抗酸化力」は注目に値します。食品の酸化とは、脂質などが空気に触れることで味が劣化したり、有害物質がつくられたりする現象です。
大豆が主成分である味噌には相応の脂質が含まれています。しかし、味噌には、それらの脂質の酸化を強く抑制するはたらき、つまり抗酸化力があるというわけです。
味噌の健康維持機能
味噌が健康に良いというのは日本人の実感です。経験的にそして疫学調査(地域・集団を対象として、病気の原因として考えられる要因と病気の発生との因果関係を調べること)・研究室での実験から、味噌は、健康維持に関してさまざまな効果があると考えられています。
味噌の科学的知見
次に挙げるのは、味噌の効果として、具体的に挙げられているものです。わかりやすいものに絞ってご紹介します。
・抗腫瘍性(胃がん・乳がんの抑制効果)
・脱アレルゲン(大豆アレルギーが起きない)
・血圧上昇の抑制
・活性酸素(老化・疾病の大きな原因の一つ)の消去作用
・食後高血糖の抑制
・放射線防御効果
人間の体のしくみは、全部解明されているわけではありません。よく〇〇が健康にいいらしいというと、「エビデンスは?」というやりとりをネット上でも見かけます。
味噌のような伝統食で、日本人が壮大な規模と時間をかけて実体験を共有している食品も例外ではありません。
こちらでご紹介している味噌の効果については、引用元を明らかにしています。それぞれ実証されたデータをもとに書かれている書籍や文書を参考にしました。
新しい健康食品ではなく、味噌です。一読の価値はありますよ。
味噌の「放射線防御効果」
味噌に放射性物質による健康被害を防ぐ効果があるという説は、ご存じの方も多いのではないでしょうか。ご存じない方のために、詳しくご説明しますね。
長崎で被爆した故秋月辰一郎氏(享年89歳)の医師としての体験に基づく話が、さきがけとなりました。
爆心地から1.4㎞ほどの結核療養所(のちの聖フランシスコ病院)で被爆した秋月医師は、患者さんの症状が、放射線宿酔(放射線を大量に浴びたときの症状)と似ていることに気づきます。
そして、放射線技師が濃い食塩水を飲んで症状を和らげていたことを思い出すのです。また、秋月医師ご自身も病弱で、食養生を続けてこられた方でした。
その知識と経験から、「うんと塩をつけた玄米おにぎり・塩辛い味噌汁」という食事を病院全体に指示しました。
体調不良を訴えていた病院の職員の方々も、この食事療法を続けた結果、症状はおさまり、一命をとりとめたというあまりにも有名な体験談です。
秋月医師は、「体質と食物-健康への道」(クリエー出版)の序文で、次のように述べておられます。
「食養生、食物の研究を巡りめぐって、味噌にたどりついた。味噌は、日本人の食物のかなめであると知った。(中略)味噌は科学以前のものであった。しかも科学によって証せられるものである。」
秋月医師の実体験と著作は、海外へも広まっていきます。チェルノブイリ原発事故の際、西ヨーロッパへの味噌の輸出が一時的に増えたことと関係があるでしょう。
同じく被爆地である広島では、秋月医師の体験を科学的に証明しようとする専門家の方々が、味噌の効果について研究をされています。以下、2点ご紹介しますので、詳しくお知りになりたい方はお読みください。
「味噌香気成分HEMFによる放射線の誘発細胞癌化の抑制」(広島医学49巻3号:1996年3月)
「お味噌の効能」(NipponJozokyokaiShi:渡邊敦光著)
https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/ja/00031603
世界に広がる味噌効果
味噌にはさまざまな効果がありますが、一番の魅力は、美味しさだと思います。いくら体によくても美味しくなければ受け入れられません。
味噌汁は毎朝飲んでも飽きることのない、いわば国民食です。しかも保存食!
和食が広まるにつれ、海外の味噌需要も高まりを見せています。下のグラフは、「2019 年農林水産物・食品の輸出実績」(農林水産省作成)の味噌です。
味噌と玄米は備蓄の基本
味噌の健康効果を少しでも実感していただけたでしょうか。
万能調味料として高い抗酸化力を誇る味噌の効果には、科学的な光が当てられています。
・抗腫瘍性
・脱アレルゲン
・血圧上昇の抑制
・活性酸素の消去作用
・食後高血糖の抑制
・放射線防御効果
こんな可能性に満ちた効能をもつ食品がほかにあるでしょうか。ぜひとも備蓄しておきましょう!
味噌は常温保存できますが、私は冷凍庫に保管しています。1年経っても風味も柔らかさも何ら変わりません。
味噌そのものの豊かな風味を味わえる「原材料全て無農薬の無添加味噌」をお探しの方は、購入先・価格の比較記事をご参考になさってください。
【関連記事:原材料は全て「無農薬」!通販で買えるおすすめの九州産無添加調味料[購入先・価格]】
まとめて購入し、年単位でローリングストックしています。味噌好きな方で、まとめ買いがお得な場合は冷凍庫保管がおすすめです。
味噌を使った保存食油味噌の作り方をこちらの記事でご紹介しています。
【関連記事:栄養たっぷりの油味噌はご飯のおともに最高です!日持ちする秘けつは?】
[ 参考文献:「醤油・味噌・酢はすごい」(小泉武夫著)中公新書]
[ 参考文献:「体質と食物-健康への道」(秋月辰一郎著)クリエー出版]