油味噌を召し上がったことがありますか。
味噌を油で炒めた旨味と栄養の詰まったおかず兼調味料です。ごはん党なら油味噌があればほかにおかずはいりません。
とくに南九州や沖縄などの暑い地方では、昔から保存食として親しまれてきました。
こちらの記事では、地方によって異なる油味噌の具や、より日持ちのする作り方をご紹介します。
常備食として作っておけば貴重なおかずの非常食にもなりますので、備蓄におすすめしたい一品です。
味噌と油の相性
味噌の優れた効能についてはよく知られていますね。詳しくお知りになりたい方はこちらの記事をご覧ください。
【関連記事:今日から味噌で免疫力向上!味噌の健康効果が明らかになっています】
水と油は相性の悪いことのたとえに用いられますが。味噌と油はどうでしょう?
味噌と油はとても相性の良い組み合わせです。
味噌は保存性の高い発酵調味料。
味噌を使った保存食として肉・魚・野菜を漬け込んだ味噌漬けがありますね。
あの味噌漬けは味噌と一緒に食材を食べるわけではなく、味噌を落としてから食べます。一緒に食べるには味噌の味が強すぎますよね。
そんな塩気の強い味噌に油を加えると味にコクが出ます。しかも味噌は油を吸着しますので、油っこくなることがありません。
味噌と油は絶妙にまじりあい、油は味噌の塩気をマイルドにし、味噌は油を包み込みます。
茄子の田楽や味噌汁の油揚げが大人気なのはうなずけますね。
油味噌の作り方
とてもかんたんな油味噌の基本の作り方をご紹介します。
簡単な油味噌の作り方
油味噌は、油を味噌で炒めて調味料で味をととのえれば出来上がりです。
一番シンプルな南国の油味噌は、麦味噌と砂糖だけで作ります。
①油を引いたフライパンに麦味噌と砂糖を入れる
②中火でじっくり炒める
③とろりとしてきたら火からおろして容器に移す
麦味噌と砂糖の割合は、1:1くらいが甘くて美味しいですよ。きび糖がおすすめ!
砂糖は一度に入れずに、味を見ながら加えていくと失敗しません。
油味噌の材料と調理時間
豚肉・かつお節・野菜などを混ぜ込むと、より旨味があって栄養価の高い油味噌になります。
豚肉は、ひき肉でもブロックでも、味噌とは別にしっかり火が通るまで炒めましょう。
また、豚肉の油味噌は、砂糖だけではなくショウガやニンニクを加えると風味が増します。
かつお節は乾物ですので、炒めた油味噌に混ぜ込んで更に数分炒めるだけで大丈夫です。
ご当地油味噌の具
日本各地にご当地油味噌があります。
油味噌の基本の作り方は同じです。
1 具材を炒める
2 具材に調味料・味噌を合わせて炒める
具材は地方によって特色があります。味噌以外の主な調味料は、酒・みりん・砂糖です。
沖縄の油味噌
沖縄では油味噌のことをアンダンスーといいます。
アンダンスーの具材は豚肉です。
沖縄が古来より長寿の島であったことは有名ですね。
長寿の背景や理由について、かつて13年間にわたり琉球大学の疫学調査が行われています。
その要因の一つが食生活。とくに豚肉の摂取が他県に比べてひときわ多いことがわかりました。
豚肉は良質のたんぱく質とビタミンB群を豊富に含み、とくにビタミンB1は牛肉の10倍の含有量だといわれています。
ビタミンB1は、「糖質」を体内でエネルギーに変えたり、皮膚や粘膜の健康維持を助けたりするのに不可欠な栄養素です。
玄米にもビタミンB1が多く含まれており、玄米を主食としていたころの日本人の栄養源でした。
しかし、江戸時代に庶民の間に白米が広まるとともに、脚気の症状に悩まされる人が出てきたそうです。
以後、明治大正と脚気は国民病といわれるほど流行り、ビタミンB1の不足が原因だとわかるまで長い時間がかかりました。
沖縄は肉食を禁じる仏教の影響を受けなかったことが幸いしたともいわれています。
豚肉を炒めて調味料は泡盛・黒糖となれば、栄養満点のご長寿油味噌の出来上がりですね。
[ 参考:「明治日本の栄養改善と食品産業 脚気の発生」(農林水産省) ]
鹿児島の油味噌
鹿児島も油味噌といえば主流は豚味噌です。
鹿児島では高校生が作った豚味噌もブランド化され、人気を博しています。
1991年に阿久根農業高校3年A組(現在の鶴翔高校)の生徒が加工食品の製造を始め、「3年A組」ブランドとして商標登録されました。
人気の理由は、かわいらしい缶詰のデザインと高校生が作ったという話題性だけではなく、豚味噌の味です。今や鹿児島土産の定番になりました。
鹿屋農業高校の黒豚味噌、薩摩中央高校の豚味噌など鹿児島の若き豚味噌パワー炸裂です。
そして、鹿児島といえば忘れてはならない食材がもう一つ。
かつお節・なまり節(生節)です。
なまり節とは、簡単に言うと柔らかいかつお節です。かつお節のようにカチカチに乾燥させて出汁として使うのではなく、そのままほぐして食べられます。
かつお味噌は、細かくほぐしたなまり節をいれてつくります。
鹿児島県の山川高校では地元山川産のかつお節・なまり節を使った油味噌を作っています。
南国鹿児島は味噌・黒酢といった優れた発酵文化が根付いている土地です。発酵食品に関する知恵と技には並々ならぬものがあります。
【関連記事:鹿児島の黒酢はアミノ酸の宝庫!かめつぼの中で何が起きている?】
宮崎の油味噌
宮崎には豚味噌のほかに、かえり(いりこの粉)を使った油味噌があります。
具材も豊富でごぼうやニンジン、地方によっては特産のシイタケを混ぜ込んだりと農業の盛んな宮崎らしい賑やかさです。
長野の油味噌
油味噌は南国の保存食といったイメージがあるのですが、長野でも郷土料理として親しまれています。
信州みそで有名な長野に味噌料理がないわけがありませんね。
ただ、長野の油味噌は南国のそれではなく、なすびとピーマンの油炒めのことです。ところ変わればですね。
日持ちする油味噌とは
さまざまな具材を練りこんだ油味噌をご紹介しました。
保存食ですのである程度日持ちはしますが、家庭で作る場合、肉の入った豚味噌は他の具材に比べて傷みやすいのは確かです。
沖縄のアンダンスーは冷蔵庫で保管すれば半月は持つそうですが、調味料や作り方によるところは大きいでしょう。
また、砂糖をたっぷり入れると日持ちがします。
とはいえ、砂糖を入れすぎるのも本来の油味噌の味が損なわれる気がしますよね。
砂糖に頼らずにもっと日持ちする油味噌はないのか?
あります!
具材を入れない油味噌です。
私は「具なし油味噌派」で冷蔵庫に油味噌を延々と切らさずに保存しています。
冷蔵庫に長く置いておくと味噌は色が変わり、硬くなりますが腐りはしません。味噌のチカラは偉大です。
ただ放っておくと風味は落ちていきますし、カチコチになってしまいますので、少しずつ作って食べるのが一番ですね。
日ごろから油味噌を手作りして常備食に
油味噌は、相性の良い油と味噌を混ぜた栄養豊かな保存食です。
好みの具材を混ぜて戴くもよし、具なしで戴くもよし、ご飯と一緒に美味しく戴きましょう。
ぜひ手作りをおすすめします。
地元の食材で高校生が作った油味噌もありますので、ご購入もできます。
常備しておけば、いざというときも美味しい非常食になりますよ。
手軽なレスキューライスと油味噌の組み合わせで、とっさの非常食ご飯でも栄養満点です。
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また油味噌と一緒にヤマアブランドのにんにくみそもぜひお試しください。