麦太郎うどん!名前だけでもご存知の方が、どれくらいいらっしゃるでしょうか。
私が備蓄している乾麺の中で、生産者さんが地元の小麦だけで作った乾麺うどんは、麦太郎だけです。
麦太郎には「麦太郎そうめん」もありますが、うどんの麦太郎は、そうめんより手に入りにくい商品です。
店頭で見つけて小躍りし、いそいそと買っては誘惑に負け、常に備蓄は品薄。
九州産・福岡県産というくくりではなく、筑前町産の小麦だけで作られた麦太郎うどんは、乾麺うどんの中で真っ先におすすめしたいうどんです。
麦太郎うどんが生まれたドラマを振り返り、日本の小麦の底力と可能性を、読んで下さる方々に少しでもお伝えしたいと思います。
麦太郎うどんは「麦プロジェクト」から始まった
乾麺うどんの逸品麦太郎うどんは、筑前町の「麦プロジェクト」から生まれました。
福岡県と佐賀県にまたがる筑紫平野は、北海道に次ぐ小麦の生産量を誇ります。その筑紫平野の北部にある筑前町は、福岡県屈指の小麦の産地です。
筑前町の位置は上の地図をご覧ください。
発起人は筑前あさくらの中華料理「永徳酒家」
乾麺うどん麦太郎を生んだ「麦プロジェクト」は、筑前町で中華料理店を営む日永田(ひえいだ)さんの素朴な疑問が出発点でした。
日永田さんの「永徳酒家」は、地元で長年親しまれている味に定評のある中華料理店です。何を食べても美味しいのですが、お持ち帰りの肉まんは特に大人気商品。
初めて戴いたとき、中国で食べたモチモチの肉まんを思い出しました。日本の肉まんと皮が全く違うのです。
実は、この肉まんには「地元の食材を使って地産地消の商品を作りたい!」という日永田さんの思いがこめられていました。
日永田さんが、店の裏手に広々と広がる小麦畑の小麦粉を求めて、地元のJA筑前あさくらを訪ねたところからドラマが始まります。
JA筑前あさくら・大陽製粉・商工会の強力コラボ
JA筑前あさくらを訪ねた日永田さん。
筑前町産の小麦粉が欲しいと話す日永田さんに対して、思いもよらない答えが返ってきます。
なんと筑前町産の小麦粉はないというのです。広大な耕作面積がありながら、全ての小麦は他の産地の小麦とブレンドされるため、地元産の小麦粉は存在しないと。
小麦の複数産地ブレンドは特別なことではなく、品質を安定させるため製粉業界では当たり前のことだそうです。
筑前町の小麦粉であっても、たとえば九州産小麦粉や福岡県産小麦粉として流通し、市町村単位で生産されることはないという事情を知り、驚く日永田さん。
しかし、ここで引き下がらなかった日永田さん。地元の飲食店に声をかけ賛同者を募ります。
この熱意がJA筑前あさくら・地元商工会を動かしました。
さらに、福岡県大手の製粉業者「大陽製粉」さんが赤字覚悟で「筑前町産小麦粉」の製粉を引き受けたのです。
平成23年(2011年)、筑前町の麦プロジェクトが始動しました。
「筑前麦太郎」&「筑前麦夏ちゃん」誕生
こうして誕生したのが、100%筑前町産の小麦粉「筑前麦太郎」と「筑前麦夏ちゃん」です。男の子と女の子というイメージキャラクターもデザインされました。
「筑前麦太郎」は、もちもち感が特徴の薄力系小麦粉。
「筑前麦夏ちゃん」は、コシの強さが特徴の強力系小麦粉。
この2種類の小麦粉を使って、日永田さんの肉まんはもとより、筑前町のうどん店・和食や洋食の店・ケーキ屋さんにパン屋さんなどが、さまざまな商品を生み出しています。
今回おすすめする乾麺、麦太郎うどんもその一つです。
筑前朝倉の小麦で作ったおすすめの乾麺麦太郎うどん
乾麺うどんとは、いわゆる乾燥うどんです。
なまや半生のうどんに比べて水分量が少ないため、保存期間が長いのが長所の一つです。
乾麺うどん麦太郎の賞味期限も1年。まさに備蓄におすすめのうどんといえます。
乾麺うどんのコシ
ふつう、うどんには中力粉が使われますね。
薄力粉では麺に必要なコシが生まれませんし、かといって強力粉では硬くなりすぎます。そこで、うどんは中力粉だよねというのが一般的です。
ところが、筑前町産小麦粉100%麦太郎うどんは、薄力粉系「筑前麦太郎」と強力粉系「筑前麦夏ちゃん」がタッグを組んで完成した特別ブレンドの乾麺。
国産薄力粉特有のもっちり感を前面に押し出しつつ、茹でた後ものびにくいコシの強さが特徴です。
温かいうどんでも冷やしうどんでも「The うどん」といえるコシの麦太郎うどん。
また、すき焼きのしめにも麦太郎うどんをどうぞ試してみてください。
乾麺でありながら味のしみこみも良いうえに、乾麺特有のつるつるとしたのどごしも楽しむことができますよ。
うどんに小麦の風味
乾麺うどんの原料は小麦粉・食塩・水だけです。もちろん、麦太郎うどんも。
余分な材料が入らない分、小麦粉の風味がストレートに伝わるのが乾麺といえますね。
麦太郎うどんの原料の小麦粉は筑前町産小麦粉100%。麦太郎うどんには、良質で新鮮な小麦粉の風味が生きています。
茹で上がりの麦太郎うどんをそのまま食べると、小麦粉の風味があることがよくわかります。
この味わいが美味しい出汁と出会ったとき、讃岐うどんに負けないコシと風味豊かな「筑前うどん」のできあがりです。
麦太郎うどんはお取り寄せ可能な乾麺
筑前町の麦プロジェクトは、地元産100%の小麦粉を使って筑前ブランドの商品化を実現しました。飲食店・商工会・JA・製粉会社が一体となった取り組みの成果です。
薄力粉系の「筑前麦太郎」・強力粉系の「筑前麦夏ちゃん」の2種類の小麦粉から、たくさんの商品が生まれています。
乾麺の麦太郎うどんもその一つです。「筑前麦太郎」のもっちり感と「筑前麦夏ちゃん」のコシの強さをあわせもつ風味豊かな乾麺うどん。
筑前町の店頭でも、なかなか出会えない麦太郎うどんですが、JAの通販や筑前町のふるさと納税返礼品としてお取り寄せもできます。
一切ブレンドせず地元産小麦粉だけで作りますので、国産小麦粉ならではの価格の高さにコスト高も加わり、お値段は高めです。
美味しくて新鮮な国産小麦粉が、外国産よりも安くなる日が来ることを願っています。
備蓄に乾麺うどんを考えていらっしゃる方はどうぞ、麦太郎うどんもお試しくださいね。