「備蓄」していますか?災害を経験し乗り越えてこられた方、経験がなくても意識の高い方は、当たり前のようにさまざまな備蓄をされていると思います。
こちらの記事で、備蓄食料としておすすめするのは主食の玄米です。
玄米をおすすめする理由・食べ方・選び方をわかりやすくご説明したいと思います。
実際に買って食べてみた、備蓄におすすめの「無農薬」玄米もご紹介します。どうぞ参考になさってください。
防災備蓄と食料難のための備蓄との違い
防災備蓄と食料難のための備蓄では、期間と必要量が違います。
防災備蓄は、災害に備える備蓄です。
災害には自然災害と人為的災害があります。
私たちが一般的に想定しているのは、地震・台風・大雨・大雪・ 洪水 ・ 土砂崩れ ・津波・火山の噴火などです。
日本全土が壊滅してしまうような災害はもう手の施しようがありません。
対処できるのは局所的な災害です。行政は機能しているという前提で、私たちは防災備蓄を考えていますよね。
官邸のサイトにも、「大規模災害発生時には『1週間分』の備蓄が望ましいとされています。」とあるように、防災備蓄は、比較的短期間の備蓄です。
ライフラインが一時的に寸断されても、やがて復旧しますし、その間、外部からの救援物資も届きます。
一方、食料難のための備蓄は、前提が異なります。
食糧危機は世界的な連鎖の問題です。食品価格の高騰に始まり、やがて食糧そのものが入手困難になったとき、行政も「無い袖は振れぬ」状態になっています。
戦時中の「配給制」が復活するかもしれません。
いつから始まりいつ終わるのか、そのときの世界情勢によるでしょう。防災備蓄の期間より長引くことは確かです。
したがって、食料難のための備蓄は、防災備蓄とは比較にならないほど大量の食料を必要とします。
とはいえ、家庭で一度に大量の食料を備蓄するのは現実的ではありませんよね。ローリングストックは必須です。
備蓄にはどんな食料が向いているの?
備蓄に欠かせない食料は、米や麦などいわば主食の食糧です。
世界を見渡すと、主食といえば、米・小麦を使ったパンや麺・いも・トウモロコシと、さまざまです。
その土地の気候風土に合った農作物を育て、日々の糧としてきたことがわかります。
全てエネルギー源となる炭水化物で、備蓄向きです。
裏を返せば、備蓄できるからこそ主食になったともいえるでしょう。
大量に栽培でき、保存がきく食べ物ばかりです。
日本では、大陸から稲作が伝わって以来、米作りが途絶えることはありませんでした。
パンや麺も人気ですが、主食の筆頭はやはり米でしょう。
米さえあればなんとかなる、それが日本の食文化の基本です。備蓄には欠かせません。
備蓄には白米より玄米をおすすめする理由
米の備蓄には、白米より玄米がおすすめです。おすすめの理由を、栄養価・保存の両面からご説明します。
白米と玄米の違い
白米と玄米そのものの違いは、ご存じでしょうか。玄米を精米したものが白米ですね。もう少しくわしくご説明しましょう。
米は、稲の実です。稲の実を籾(もみ)といい、籾殻(もみがら)という硬い殻に包まれています。収穫後の稲から、実の部分を外す作業が脱穀(だっこく)です。
籾を玄米にする最後の工程が、籾摺り(もみすり)。籾から籾殻を取り除いて初めて、食べられる米、玄米になります。
玄米の玄はくろいという意味。くすんだ米の色を表現したのでしょう。
胚乳を覆っている表皮、つまり糠(ぬか)の色ですね。玄米は、表皮と胚芽をもつ果実!発芽します!
この玄米から糠と胚芽を取り除く作業を精米といいます。そして白いコメ、白米ができあがるというわけです。
栄養価
玄米は、稲の実であり種です。糠と胚芽には、命をはぐくむための栄養素が豊富に含まれています。
玄米が完全食、スーパーフードといわれるのには、ちゃんとわけがあるのですね。
白米が玄米と比べて栄養価が落ちるのは、精米によって一番栄養のある部分を削っているからです。
ふくよかでつやのある白米のおいしさは言うまでもないのですが、栄養価では圧倒的に玄米に軍配が上がります。
白米と玄米の栄養価を、具体的に数字で比べてみましょう。
100グラムあたりの数値です。ちなみに、ご飯一杯の重さを約150グラムとすると、吸水前の白米自体は約65グラム。
[水稲穀粒]精白米 うるち米 | [水稲穀粒] 玄米 | |
エネルギー | 342kcal | 346kcal |
たんぱく質 | 6.1g | 6.8g |
脂質 | 0.9g | 2.7g |
食物繊維総量 | 0.5g | 3.0g |
炭水化物 | 77.6g | 74.3g |
カリウム | 89mg | 230mg |
カルシウム | 5g | 9g |
マグネシウム | 23mg | 110mg |
リン | 95mg | 290mg |
鉄 | 0.8mg | 2.1mg |
亜鉛 | 1.4mg | 1.8mg |
銅 | 0.22mg | 0.27mg |
マンガン | 0.81mg | 2.06mg |
セレン | 2㎍ | 3㎍ |
ビタミンB1 | 0.08㎍ | 0.41㎍ |
ナイアシン | 1.2㎍ | 6.3㎍ |
葉酸 | 12㎍ | 27㎍ |
パントテン酸 | 0.66㎍ | 1.37㎍ |
ビオチン | 1.4㎍ | 6.0㎍ |
いかがでしょうか。もちろんこれ以外にも数多くの栄養素が含まれています。
さすがは、主食!白米も素晴らしい。さらに食物繊維・ミネラル・ビタミンも豊富な玄米は圧巻!
保存
長期保存に向くのは玄米です。玄米は表面が糠で覆われているので、酸化しにくいからです。
精米した米(白米)は、米が空気に直接触れるため、酸化が早くなります。
白米も真空にして冷暗所で保存すれば1年はもちます。
しかし、精米するとき、すでに空気に触れており、保存場所にも工夫が必要です。
白米も玄米も、賞味期限が記載されていない、水分たっぷりの生鮮食品です。
放っておくと品質が落ちます。虫やカビから米を守り、備蓄するためには工夫が必要です。
玄米の保存方法については、【備蓄する玄米の品質劣化を防ぐ保存の仕方をくわしく解説します】で説明しています。
玄米の食べ方
備蓄した玄米を精米して食べるか、玄米のまま食べるか、混ぜて食べるかはお好み次第です。
精米のしかた、玄米のまま食べるメリットと注意点を、ご説明しますね。
精米して食べる
玄米のまま保存して、好きな時に好きな分だけ精米して食べる。手間はかかりますが、精米したての白米は鮮度が良い分、つやつやして美味しいですよね。
精米のしかたは二つ。コイン精米機に持っていくか、家庭用精米機を使うかです。
それぞれにメリット・デメリットがあります。
〇コイン精米機
・メリット…メンテナンスの必要がない・動作音を気にしなくてよい。
・デメリット…持っていくのが面倒・以前の使用者のお米と混じることがある。
〇家庭用精米機
・メリット…家で手軽に新鮮なお米と米ぬかが手に入る
・デメリット…購入コストがかかる
コイン精米機は一度に大量の米を精米できますが、美味しく食べるなら少しずつ精米したほうがいいですね。そう考えると、家庭用精米機で十分でしょう。
家庭用精米機の小型タイプは卓上サイズ。1合から精米できます。
お好みに合わせて、何分づきか選ぶことも可能です。
最大容量が大きくなるほど大型化しますので、設置場所も考えて選びましょう。
玄米のまま食べる
玄米を備蓄食として考えるとき、そのまま食べることをおすすめします。
新鮮な食べ物が手に入りにくい状態になったとしたら、加工食品の出番が多くなるでしょう。加工食品ばかりだと、ミネラルやビタミンが不足しがちです。
栄養豊富な玄米は完全食。お米でもあり野菜でもあるといえばよいでしょうか。
食べ応えがあり、ゆっくり噛むことで少量でも満腹感が得られます。糖の吸収も穏やかです。
食べることで健康を維持する、主食として玄米を備蓄する意味がここにあります。
玄米食の注意点を二つ述べます。
玄米には、食物繊維が豊富に含まれているので、消化力が低下していたり、咀嚼(そしゃく)する力が弱かったりする場合は、胃腸に負担がかかります。
また、玄米に多く含まれるカリウムやリンは、腎臓病の患者さんには制限がありますので、ご注意ください。
玄米の選び方
玄米の糠や胚芽は、脂質が多いため、脂に溶けやすい農薬が溜まりやすくなります。
残留農薬です。精米した白米にも残ります。
農薬が表面についている野菜や果物と違って、米の場合は洗っても落ちません。
栄養を丸ごととれる反面、農薬まで一緒に体内に取り込む危険性が高い玄米。
備蓄食糧としての玄米の「食べることで健康を維持する」という有用性が薄れてしまいますね。
備蓄する玄米は、「無農薬」を強くおすすめします。「無農薬」とあえてカッコ付きで表記しました。
「無農薬」の表記については、次の栽培方法でご説明しますね。
栽培方法
玄米や白米の表示に栽培方法が記載されていますね。
以前は、農薬を使わずに育てたコメには無農薬という表示があるのが一般的でした。
しかし、農水省ガイドラインの改正により、平成19年4月以降は「無農薬」「減農薬」「無化学肥料」「減化学肥料」などの表示が禁止事項となりました。
農薬や肥料の使用状況によって表示される内容が違います。下の表をご覧ください
つまり、新ガイドライン表示によれば、いわゆる「無農薬」は「農薬:栽培期間中不使用」の表示となります。
「農薬未使用」「農薬無散布」「農薬を使っていません」などの言葉を補足することも可能です。
ただし、ガイドラインには法的な拘束力はなく、いまだに「無農薬」という表示が多いことも確かです。
長年、無農薬栽培に取り組んでこられた農家の方々は、「無農薬」であることに誇りと自信をもっておられます。
消費者にしてみれば、新しい表示は、「栽培期間以外は無農薬ではないの?」という疑問がわきますよね。
表示を巡る混乱はまだ続きそうです。
一番確かなのは、顔の見える信頼できる生産者を探すことです。
八十八の手間をかけて作ってくださる方がいらっしゃらなければ、私たちは食べることができません。
「無農薬」を貫いておられる農家の方のお米を、まずは買ってみませんか。
なお、本サイトでは、ガイドラインの「農薬:栽培期間中不使用」という意味で、あえて認知度の高い「無農薬」という表記を用います。ご了解くださいませ。
産地
備蓄する玄米は、できれば身近で買えるほうがいいですよね。
農産物直売所や道の駅には、生産者の名前や顔写真を紹介しているところが増えています。
運が良ければ、生産者の方に直接お話を伺うこともできますよ。
足を運べる距離に買いたい玄米がないときは、米どころといわれる地域の銘柄を検索して、口コミを見比べながら選ぶことになるでしょう。
その際、気をつけたいのは、同じ銘柄でも土地によって味が違うということです。好みの味は、食べてみなければわかりませんよね。
価格
玄米がいくら栄養価が高く保存しやすいといっても、家計を圧迫するような価格だと、購入できません。
ある程度の量が必要ですし、玄米だけを備蓄するわけではないからです。
一般に、玄米は白米より高く、無農薬だとさらに高くなります。
理由として、食用玄米として販売する前に未熟な米粒や異物を取り除く手間がかかること、需要が少ないことが挙げられます。
白米と玄米を混ぜて食べれば、コストは抑えられます。
お手ごろな価格で購入できる「無農薬」玄米もありますよ。
試食
気になる玄米をいくつか見つけたら、最初はお試しに少しだけ買って試食してみましょう。
試食せずに一度に買い込んでしまった後、口に合わなければとても後悔します。
備蓄におすすめの「無農薬」玄米をご紹介!
備蓄におすすめの玄米となると、私の場合は地元が九州ですので、九州・山口で作られたものになります。
10年間、毎週のように直売所や道の駅に出かけて、新鮮で安心安全な農産物を探してきました。
九州の道の駅(令和2年7月1日現在137駅)で、行ったことがない所は数えるほどです。
備蓄を意識し始めてからは、近隣で手に入る「無農薬」の玄米を少しずつ買っては食べてみて、これと思ったものを備蓄しています。
別記事で、自分で直接足を運んで買ってきたものと、通販で取り寄せるものとに分けてご紹介しています。
直接買うものはこちらの記事【備蓄用の玄米に九州産を選ぶ理由は?こだわりの玄米3選もご紹介!】で、通販で買えるものは【自然栽培米にこだわる九州・山口の生産者をご紹介します!】で、詳しく説明しています。
どうぞお役立てください。
主食の玄米を備蓄してまさかのときに備えましょう!
玄米は、白米をしのぐ栄養価の高さ・保存期間の長さから、食料不足を乗り切るための備蓄におすすめの食糧です。
備蓄した玄米を、少しずつ精米して新鮮な白米を食べるもよし、玄米の栄養をそのままいただくのもよし。
玄米食は、健康状態によっては胃腸や腎臓に負担がかかるので、注意が必要です。
玄米を選ぶときは、「無農薬」がおすすめ!産地や価格を吟味して、気になるものを少しだけ購入し、試食してから備蓄の有無を決めましょう。
まずはひと口、いかがですか。
米を冷蔵して保存できる保冷米びつもあります。こちらの記事でご紹介しています。