田主丸(たぬしまる)は九州随一のぶどう産地です。
一粒一粒に甘みがギュッと詰まった田主丸のぶどう。
巨峰の生産も田主丸から広がっていきました。知る人ぞ知る田主丸。
誕生秘話を知る者にとって、巨峰といえば山梨・長野ではなく、田主丸なのです。
その田主丸が2023年7月、大水害に見舞われました。
田主丸のぶどうが、たくましく実りの季節を迎えることを祈ってこの記事を書きました。
そして、2024年。
ぶどう農家の方々、そしてボランティアの方々の懸命な復旧作業を経て、この夏も田主丸ならではの甘い甘いぶどうが実りました。
田主丸観光ぶどう協会に登録しているぶどう園を全てご紹介します。
遠方の方は、お取り寄せもできますので、田主丸のぶどうをぜひお求めください。
田主丸はどんなところ?
田主丸は、北に九州最大の筑後川、南に耳納連山をのぞむ風光明媚な土地です。
約30㎞にわたって東西に連なる耳納連山の山すそに緩やかに広がる田主丸は、日当たりがよく寒暖差があります。
また、筑後川が運ぶ地味豊かな土壌は、保水性と水はけの良さを兼ね備え、元禄時代には植木・苗木発祥の地となりました。
そして植木・苗木栽培で培った技術とフルーツ栽培に適した風土が、田主丸の人々を巨峰栽培へいざなっていきます。
田主丸を含む筑後地方は、筑後平野という肥沃な農業地帯にあり、九州そして日本の農業を支えてきました。
自然の恩恵は偉大ですが、その一方、暴れ川の筑後川は大雨のたびに氾濫する川でした。
台風から集落を守り温暖な気候を保ってくれる耳納連山でさえ、思いもよらない場所が崩れて土砂災害を引き起こします。
それでも筑後の人々は、幾たびも幾たびも尊い犠牲を払いながら、土地を守り農業を守り次いできました。
田主丸の名前の由来
田主丸(たぬしまる)も難読地名に入るでしょうか。
町の創建者の「我楽しう生まる」という言葉から「たぬしまる」という町名が生まれたそうです。
町ができたのは、慶長年間(1596-1615)といわれています。
いまだに「たのしまる」「楽しまる」という呼び方が使われることも多いようです。地域のイベントでもよく目にします。
平成の市町村合併で、田主丸は久留米市に編入合併されました。
それまでは、現在のうきは市同様、浮羽郡でした。
現在は久留米市田主丸町です。
他の市町村合併同様、久留米市と田主丸という文化圏の異なる大きな地域が一緒になりました。
昭和生まれには、久留米は久留米、田主丸は田主丸という感覚が抜けきれません。
田主丸の特産品
田主丸の特産品の代表は、植木苗木とフルーツです。
フルーツの中でも巨峰をはじめとするぶどう栽培で知られています
田主丸の植木苗木
田主丸には「殖木」という地名があります。
こちらも難読地名ですね。
「ふえき」と読みます。
読んで字のごとく、田主丸の植木苗木の発祥地です。
江戸時代に農民の生計を助ける副業として始まった樹木栽培。
田主丸では、地域を挙げて普及に取り組みました。
名人と呼ばれる生産者が次々に生まれ、田主丸にはその技術が脈々と伝えられています。
県道沿いを走ると、四季折々の樹木が目を楽しませてくれる田主丸です。
田主丸の柑橘苗木のシェアは、全国の8割を占めています。
田主丸のフルーツ
田主丸には100軒を超えるぶどう農園があります。
一つの町内にこれだけのぶどう農園がある田主丸。日本一の数だそうです。
観光フルーツ狩りができるのはぶどうだけではありません。
柿・りんご・いちじく・みかんにいたるまで、田主丸のフルーツ狩りは多彩です。
巨峰栽培は田主丸から始まった
田主丸は巨峰開植の地と呼ばれています。
巨峰が誕生したのは静岡県中伊豆町です。
昭和14年に農学者大井上康(おおいのうえ やすし)氏の「大井上理農学研究所」が、開発に成功しました。
日本の石原早生(いしはらわせ)に、世界一の巨大粒といわれるオーストラリア産センテニアルをかけたぶどう「石原センテ」です。
雨の多い日本でも栽培できて、欧州のぶどうのように高品質なぶどうが生まれました。
「石原センテ」は、研究所から見える富士山にちなみ商標名を「巨峰」と名付けたといわれています。
しかし、戦争が始まり厳しい世相の中で、巨峰は世に出られませんでした。
そして長い年月を経たのち、縁あって田主丸の地で巨峰の植え付けが始まります。
栄養週期理論研究者と田主丸の人々の熱意
大井上氏は、有名な栄養週期理論の提唱者です。
栄養週期理論とは、植物の生長をいくつかの段階に分け、その時期に最も必要とされる養分を与え不要な養分は与えないという栽培法です。
むやみに肥料を施さず、植物の生長に合わせるこの方法は、たいへん理にかなっています。
大井上氏はこの理論を体系化し、戦時中に発表しました。肥料が入手困難な時代にも少ない肥料で増収できる素晴らしい理論です。
巨峰は栄養週期理論から生まれたといえます。
昭和23年、大井上氏は、田主丸に講演に来られました。
米や麦の増産のために栄養週期理論を学びたいという田主丸の人々の熱心な求めに応じたのです。
昭和28年に大井上氏は逝去されましたが、門下生である越智通重氏と田主丸の青年たちの間に新しい出会いがありました。
日本の農業が米作りだけではなく、果樹栽培にもかじを切り始めたころです。越智氏は果樹栽培の専門家でした。
昭和30年、新しい農業に未来を切り開こうとする田主丸の農家が力を合わせて立ち上がります。
農家自ら研究所「九州理農研究所」を作り、越智氏を正式に指導者として招いたのでした。
越智氏は田主丸に居を移し、田主丸の人々と苦楽を共にし巨峰の苗を育てます。
市場に出られなかった巨峰
昭和32年4月に田主丸で初めて巨峰の開植が行われてから3年後、田主丸の巨峰は見事な大粒の実を付けました。
今まで見たことのない大きくて甘いぶどうに魅了された田主丸の人々は、次々に巨峰の栽培へ乗り出します。
しかし、市場の反応は冷たいものでした。
新しいものが世に出るとき、反発はつきものです。しかも権威の後ろ盾がなかった巨峰には風当たりが強かったことでしょう。
巨峰は市場から締め出されました。
観光巨峰園発祥の地となった田主丸
田主丸のぶどう農家は、あきらめませんでした。起死回生の手段に打って出ます。
ぶどう農家自ら巨峰を持って、マスコミやバス会社などにPRを始めました。
巨峰の実物を目の当たりにし、味わったバス会社はツアーを組み、マスコミにも取り上げられるようになっていきます。
たちまち田主丸はぶどうバスツアーで有名になり、巨峰見学会は現在のぶどう狩りへと形を変えていきました。
ご紹介した、田主丸巨峰開植の物語は、田主丸観光ぶどう協会さんのサイトに詳しく記されています。
田主丸の「筑後魂」(と私は呼んでいます)が、ひしひしと胸に迫る物語です。
「筑後魂」は「チッゴダマシイ」とよみます。
田主丸のぶどう狩り
田主丸観光ぶどう協会に登録推薦されている観光ぶどう農園を、一覧でご紹介します。
一つ一つのぶどう園の詳細につきましては、「田主丸ぶどう狩りナビ」でお確かめください。
田主丸ぶどう園一覧
連絡先はすでにメディアで公表されているご自宅は載せず、できるだけぶどう園の住所・電話番号を載せました。
名称 | 産地直送申込・お問合せ先 | ぶどうの種類 |
池尻農園 | 田主丸町益生田1510 園 TEL:0943-73-2220 | 巨峰 |
石崎里香園(石崎りこう園) | 田主丸町益生田24-1 園 TEL:0943-72-4554 | 巨峰 |
出田緑果園 | 田主丸町益生田1269-5 園TEL:0943-73-2578 園FAX:0943-73-3315 Email : budouya@mx2.tiki.ne.jp URL : http://ww2.tiki.ne.jp/~budouya/ | 赤系・白系・黒系 |
岩佐園芸樹希庵 (岩佐園芸たつき庵) | (販売所)田主丸町石垣1245 TEL・FAX:0943-73-0401 | 赤系・白系・黒系 |
岩佐幸華園 | 田主丸町石垣1158-1 TEL・FAX:0943-73-1250 | 巨峰 |
上野愛果園 | 田主丸町石垣820-2 TEL:0943-72-0884 FAX:0943-72-0884 | 赤系・白系・黒系 |
上野翠峰園 | 田主丸町田主丸1344 園 TEL・FAX:0943-72-1602 | 赤系・白系・黒系 |
巨峰ワイナリー | 田主丸町益生田246-1 TEL:0943-72-2382 FAX:0943-72-2483 Email : info@kyoho-winery.com URL : http://www.kyoho-winery.com/ | 巨峰 |
倉富深巨峰園 | 田主丸町石垣325-1 TEL・FAX:0943-72-2733 | 赤系・白系・黒系 |
平果樹園 | 田主丸町石垣465TEL・FAX:0943-73-2116 | 白系・黒系 |
高山果樹園 | 田主丸町石垣3-11 TEL:0943-72-2032 FAX:0943-72-2054 Email : t-kajuen@triton.ocn.ne.jp URL :https://takayama-kajuen.com/ | 赤系・白系・黒系 |
田中果樹園 | 田主丸町石垣1176-3 園TEL :0943-73-1357 | 赤系・白系・黒系 |
堂の上巨峰園 | 主丸町石垣619-1 TEL:0943-72-0047 FAX:0943-72-0047 | 巨峰 |
鳥越ぶどう園 | 田主丸町益生田1450-2 TEL:0943-72-2737 FAX:0943-72-2737 | 赤系・白系・黒系 |
永瀬巨峰園 | 田主丸町益生田茅野302-1 園 TEL:0943-72-3610 | 巨峰 |
中野果実園 | 田主丸町石垣343 TEL:0943-72-2967 FAX:0943-72-1328 Email:nakano@nakanokajitsuen.jp URL :https://nakanokajitsuen.jp/ | 赤系・白系・黒系 |
中野ぶどう園 | 田主丸町石垣90-2 TEL:0943-73-2071 FAX:0943-73-2071 | 赤系・白系・黒系 |
西野巨峰園 | 田主丸町石垣778-1 園 TEL・FAX:0943-73-2251 | 赤系・白系・黒系 |
林巨峰園 | 田主丸町石垣494-4または503-1 TEL:0943-73-2102 FAX:0943-73-2102 | 黒系 |
藤田巨峰園 | 田主丸町石垣617番1 園 TEL・FAX:0943-73-2112 | 黒系 |
フルーツファーム樹蘭 | 久留米市田主丸町石垣482-1 園 TEL:0943-72-4528 | 赤系・白系・黒系 |
峰玉園 | 田主丸町石垣777-3 園 TEL:0943-73-1889 FAX:0943-72-4145 | 赤系・白系・黒系 |
宮原果樹園 | 田主丸町益生田1385 (自宅) TEL&FAX:0943-73-1358 | 赤系・白系・黒系 |
森田筑緑園 | 田主丸町高丸760-1 園 TEL・FAX:0943-73-3133 | 赤系・白系・黒系 |
横溝(呈)巨峰園(よこみぞまるてい巨峰園) | 田主丸町益生田1567-2 TEL:0943-72-2001(ぶどう園) | 赤系・白系・黒系 |
緑峰園 | 田主丸町益生田688-2 園 TEL・FAX:0943-73-1068 Email:sxcnn273@ybb.ne.jp | 赤系・白系・黒系 |
どちらのぶどう園も、筑後魂と、ぶどうへの愛情にあふれています。
ぶどう狩りをするだけではなく、自然の中で食事をしたり遊んだりできるぶどう園です。
家族連れもお年寄りも、ぶどう園を訪れるすべての人たちに楽しんでもらいたいという農家の方の思いが、形になっています。
2023年は、水害の前も長雨が続きましたが、袋掛けをした田主丸のぶどう園は健やかに夏本番を待っていました。
水害の直前、田主丸の県道を通ったとき、あちこちのぶどう園の入口に止まっていた車。
小雨の中トラクターが入っているぶどう園もありました。
1年間、我が子のように手塩にかけて育てたぶどうです。
田主丸のぶどう狩りの時期
田主丸には、露地栽培を中心にハウス栽培・トンネル栽培のぶどうがあります。
通常、ハウス栽培・トンネル栽培の観光ぶどう狩りは7月中に始まります。
メインの露地栽培のぶどうは、例年8月10日ごろが開始日です。お盆前から9月下旬までぶどう狩りを楽しむことができます。
2024年のぶどう狩りも8月10日(土)にスタートしました。
観光ぶどう狩りの期間中、窓口は、田主丸観光ぶどう協会ぶどう狩り案内所さんです。
かっぱの駅として知られる田主丸駅にあります。
〇案内所について
・福岡県久留米市田主丸町田主丸1015-2
・時間 9:00〜16:00 [火曜定休]
・TEL 0943-72-1208
田主丸のぶどうの購入
田主丸のぶどうは、あんなに甘くて美味しいのに価格設定を抑えています。
巨峰といえば高価な果物のイメージがありますが、田主丸の巨峰は敷居が高くありません。自宅用にも贈答用にも最適です。
房付きではなく粒落ちも、房付きより安いのが申し訳ない完熟の甘さ!
あらゆる面で巨峰といえば田主丸。
とくに今年のぶどうこそ田主丸。
ぶどう園で購入
一番のおすすめは現地購入です。
田主丸のぶどうは、ぶどう農園で直接購入することができます。
ぶどう狩りをしなくても、もぎたてのぶどうを買うことも送ってもらうこともできます。
正真正銘のフレッシュな産地直送です。
また、現地購入のほか、ぶどう園への電話・メール・FAXによるご注文もできます。
通販での購入
田主丸のぶどうの通販での購入先として、ふるさと納税の返礼品・九州産フルーツ通販会社をご紹介します。
ふるさと納税返礼品として購入
例年、久留米市ふるさと納税返礼品として受付されているのは、栄養週期理論を実践されている「池尻農園」さんの巨峰です。
〇「池尻農園」ハウス巨峰 約1㎏ 寄付金額11,000円(ふるさとチョイス)
「池尻農園」さんの巨峰は、長年にわたり博多大丸のお中元品でもあります。
また、露地栽培の巨峰が、受付開始されています。
8月中旬~9月中旬ごろのお届けになるそうです。
九州産フルーツ通販会社での購入
「まるかじり九州」は福岡市に拠点をおく九州産青果等の通販専門店です。
楽天市場とYahoo!ショッピングの店舗トップページのリンクを貼っておきますね。
〇「まるかじり九州」楽天市場ぶどうは田主丸で
2023年、田主丸は大水害におそわれました。激甚災害です。
田主丸は巨峰開植の地。
栄養週期理論で名高い大井上氏門下の越智通重氏、そして田主丸ぶどう農家の夢の結晶、それが巨峰です。
幾多の困難を乗り越え田主丸の地で実を結んだ巨峰。
田主丸は、朝倉やうきはと共に、災害を力強く乗り越えていくと信じています。
皆さまどうか田主丸へぶどうをお求めにいらしてください。