備蓄用の主食というと、日本ではお米ですね。
それも、白米より長期保存に向き、栄養価も高い玄米。すでに備蓄を始めている方も多いことでしょう。
ふだん、食べているお米にするか、それとも別のお米を試してみるか、迷いどころですよね。
食べ物が限られる備蓄用だからこそ、できるだけ美味しくて安心安全なものを選びたいもの。
今回は、日本全国の米どころの中から、九州産の玄米をおすすめする理由を、ご説明します。
私もお世話になっている生産者さんの、こだわりの無農薬玄米もご紹介しますので、どうぞご覧ください。
玄米を備蓄するなら「無農薬」!
玄米を備蓄するなら「無農薬」がおすすめです。
栄養価の高い玄米。
白米を精米する過程で削られてしまう糠(ぬか)や胚芽に、種を育てる栄養分が詰まっています。
玄米の栄養価については、こちら【食料不足に備えようとしている方へ備蓄食糧として玄米をおすすめする2つの理由】で詳しく解説しています。
「スーパーフード玄米です!」が、しかし、玄米をおおっている糠の部分には、残留農薬など有害物質もたまってしまいます。
なんら制限のない日常であれば、私たちの体は、解毒作用がうまく働いています。
しかし、食料不足になるような状況では、心身ともにストレスの影響を強く受けるでしょう。
栄養が偏りがちな備蓄生活の中で、完全食といわれる玄米の栄養素は不可欠。一方、体に悪いものは、とり入れたくはない。
だからこそ備蓄用には、「無農薬」玄米をおすすめしたいのです。
今回は、九州産の玄米について、そのおいしさのわけを述べます。
九州の米作りを語るうえで、自然環境と、農業に情熱を傾ける生産者の存在は欠かせません。
環境と人という、二つの側面からご説明しますね。
美味しい玄米を生み出す九州の自然と水
稲作は、大陸から九州に伝わったといわれていますが、生産量のトップは北海道、そして東北地方です。
北海道も東北も水田の面積が圧倒的に広く、耕地面積では、九州はとても及びません。
稲は寒さに弱い作物です。
世界を見渡しても、稲作は、アジアの温暖な地域で盛んですよね。
日本では、寒い地方に米どころが多いというのは不思議な気がしませんか。
九州は米どころではないの?
もちろん九州も米どころです!
北から南まで日本は米の国。南方から来た稲が、日本中で栽培されるようになったのは、米作りに適した環境と品種改良のたまものです。
美味しい米の産地の条件として、よく挙げられるのが次の4つです。
・豊かな水
・広くて平らな土地
・水はけのよい土
・寒暖差の大きさ
東北の庄内平野などは、雪解け水が豊富で寒暖差も大きく、まさに典型的な米どころといえますね。
一方で、稲は寒さに弱い作物。実は、北海道のお米も1980年代になるまでは、味の評判もいまひとつでした。
しかし、北海道の大地に合った品種の改良に取り組んだ結果、高い評価を得るようになったのです。
では、九州に目を向けてみましょう。
耕地面積こそ北の大地にはかないませんが、米作りの4つの条件を満たしている土地は、九州のあちこちにあるのです。
地形・気候・水の3つに分けてご説明します。
九州の地形
九州は、断層によって、地理的に北部九州・中部九州・南部九州に区分されます。
九州には、17の活火山があり、活動も活発です。なお、阿蘇山は、世界最大級のカルデラです。
大きな山地が二つあります。
九州中央部を北東から南西につらぬいている九州山地には、1500mを超える山々がそびえ、北部の筑紫山地(つくしさんち)は、低くなだらかです。
山すそには平野が広がっており、農業地帯になっています。
中でも九州最大の面積をほこる筑紫平野(ちくしへいや)は稲作の中心地です。
九州を流れる大小さまざまの川のうち、一級河川は20あります。
筑紫平野を流れる筑後川が、九州最大の川です。
利根川(坂東太郎)・吉野川(四国三郎)と並んで、筑紫次郎の異名をもち、日本三大暴れ川の一つに数えられています。
九州の気候
九州は、黒潮本流と対馬海流の影響を受け、温暖な気候です。
しかし、山間部は寒暖差が大きく、冬はかなり冷え込みます。
九州山地の北と南では気候も異なりますが、概して降水量が多く、夏は台風の影響を大きく受けます。
九州の名水
九州は名水の宝庫でもあります。
阿蘇の伏流水に代表されるような、湧水に恵まれています。自然の恵みですね。
水質もよく、名水100選が19か所も。湧水群で言うと、その数はもっと多くなります。
あちこちにある湧き水で水を汲む人の姿も珍しくありません。
たとえば、熊本市の水道水や、耳納山麓のうきは市の水は、すべて地下水です。
ミネラル豊富な水は、折り紙付きの美味しさです。
九州は日本の食料供給基地
九州の自然の多様性が、少しおわかりいただけたでしょうか。
九州の生産者は、時に牙をむく、火山や台風などの自然災害と向き合いながら、その恵みを生かして農業を営んできました。
九州は、山がちで、平野は決して多くありません。
火山灰の積もったシラス台地は、水はけがよすぎて稲作には向きません。
しかし、温暖で良質な水に恵まれています。
標高の高い山のふもとに広がる平野部は、寒暖差も大きく冷涼な気候です。
「適地適作」(その土地の自然的・社会的条件に最適な農作物を栽培すること)という言葉がありますね。
九州の生産者は、米作りができる土地では米を、不向きな土地では、野菜や果物等を栽培し、畜産に取り組み、全国に供給しています。
九州の農業産出額は、全国の2割を占めています。
農林水産省の調査(H30)によれば、耕地利用率も高く、佐賀県は全国1位です。
九州の米どころにも優れた生産者が多い
九州の米作りを支えているのは、研究熱心な生産者の方々です。
かつて、減反を強いられ、パンやパスタに消費者を奪われ、それでも田んぼを守り続けた米農家。
そのおかげで、私たちは備蓄用に玄米を用意することができます。
北部・中部・南部の3つに分けて、米作りの特色をご紹介しますね。
どの地域でも、環境や時代の動向に合わせて、品種改良に取り組み、新しいコメが次々に生まれています。
九州北部の米作り
九州北部は、平野部が多い稲作地帯です。
とくに福岡・佐賀の両県に広がる筑紫平野(福岡県側が筑後平野・佐賀県側が佐賀平野)は、九州随一の米どころ。
筑紫平野では、稲作とともに、小麦の栽培も盛んで、日本一の二毛作穀倉地帯として知られています。
昔から、九州の人間にとって、佐賀のお米といえば「うまいコメ」の代名詞でした。
福岡県は耕地面積の約8割が水田で、九州一の米の消費地でもあります。
九州中部の米作り
九州中部には、くまモンでおなじみの熊本県があります。
県内には1000箇所を超える湧水池があり、名水100選の名水地の数も全国一です。
清らかで汲めども尽きぬ豊かな水こそが、熊本を米どころにしたといえます。
すでに江戸時代には、「東の加賀米」・「西の肥後米」と並び称され、将軍家への献上米として有名だったそうです。
2012年には、県産米の「森のくまさん」が、「米の食味ランキング」第一位を獲得し、レベルの高さを改めて全国に知らしめました。
九州南部の米作り
九州の南に位置し、シラス台地が広がる鹿児島県にも、有名な米どころがあります。
標高180m前後の大口盆地に位置する伊佐市です。
九州山地の伏流水が流れ込み、昼夜の寒暖差が20度近くにもなる、米作りの聖地のような土地です。
寒冷な内陸性の気候と清流に恵まれた伊佐は、「焼酎発祥の地」としても有名。
米どころは酒どころですね。
ひょっとしたら、伊佐米は食べたことはないが、伊佐の焼酎なら呑んだことがあるぞという方もいらっしゃるのでは。
九州「無農薬」玄米を北部・中部・南部から1つずつ
数ある九州の「無農薬」玄米の中から、私が日ごろ戴いているお米(玄米・白米)を、3つだけご紹介しますね。
全国の米どころには、米作りの名人がいます。
土地と米の相性を見極め、より美味しくより安心安全な米作りを実践している名人です。
その名人のお米をどうぞご覧ください。
【北部から】
道の駅「久留米」で買い求めたミルキークインの玄米です。
パッケージに手作りで貼ってある生産者の方の言葉を引用しますね。
「高良山のふもとで、農薬・除草剤・化学肥料・堆肥を一切使わず、昔からの麹(こうじ)酵母(こうぼ)乳酸菌・れんげ草で育てた安心安全な美味しいお米です。」
うむ。うーむ。改めて書いてみるとすごいなあと思います。
玄米のまま戴いています。炊飯の方法も腕も選びません。どうやって炊いても、甘みがあって、超モチモチです!
【中部から】
ノーブランドですが、阿蘇産ヒノヒカリの玄米です。
阿蘇の直売所で購入し、そのまま袋に入れてエージレスを投入しています。
こんな不格好な形で撮ってしまい、生産者の方に申しわけないです…。
30年以上、無農薬栽培を続けておられる米作り名人の自信作です!
無農薬で米を作る人などほどんどいなかった時代に、一念発起されて現在まで。
長年、無農薬を貫いてこられた気骨ある生産者の方にとっては、名称が「特別栽培米」になろうが、何になろうが、あまり関係のない話。
【南部から】
鹿児島の米どころ、伊佐市から、「ライス郷井手口」さんの「アイガモこだわり米」をご紹介します。
この米袋の笑顔の素敵なご夫婦!
米作り名人の井手口正さんと奥さまです。
お米を作る人(ご家族・従業員の方)も、そのお米を食べる人も、笑顔で健康であるようにという井手口さんの思いが伝わってきます。
もちろん完全無農薬!除草や害虫は、アイガモちゃんがしてくれます。
こちらの画像だけが白米で、封も切っていることにお気づきでしょうか?
あまりに美味しいので、備蓄用の玄米だけではなく、白米も「常備米」!
私はご飯と味噌汁があれば何もいらない派ですが、このアイガモ米は味噌汁要りません。
備蓄用に九州産のおいしい玄米はいかがですか
備蓄用の玄米に、九州産をおすすめする理由がおわかりいただけたでしょうか。
ミネラル豊富な水が豊かに湧き出る九州!
大河が流れる平野があり、寒暖差の大きい稲作地帯がある九州!
そして、営々と受け継がれてきた米作りの知恵と情熱!
どうぞ、九州の道の駅や直売所にお出かけください。
たくさんの美味しいお米が、肩を並べて棚に並んでいますよ。
九州産の「無農薬」玄米については、こちらの記事【「無農薬」・有機栽培・自然栽培の違いは?九州の「無農薬」玄米生産者サイトもご紹介】でも、自然栽培米については、こちらの記事【安心安全で高品質の自然栽培米を作り続ける九州・山口の生産者をご紹介します!】で詳しくご紹介しています。